昨日の「ミヨシのそよ風を使って EDTA が体質に合わないことが判明」の続き。ミヨシのそよ風が体質に合わないことがわかったけれど、初めの命題である「洗濯のコストを減らす」ということの答えは出ていなかった。そこで、昨日から今日にかけていろいろと調査して、計算なんかをしてみたので、ずらっと書いてみた。
目次
なぜ硬度が高いと石けんの洗浄力は失われるか
シャボン玉スノールはコスト高である。洗濯にかかるコストを減らしたい。どうしたら、石けん自体の使用量を減らせるか。それは水道の硬度と関係するらしい。
石けんの成分は脂肪酸ナトリウム [CH3(CH2)n-COONa]。水中に溶けると CH3(CH2)n-COO– と Na+ になる。 CH3(CH2)n-COO– の部分が界面活性剤として働いて汚れが落ちるわけである。 CH3(CH2)n-COO– が、水中の鉱物(マグネシウムイオン [Mg+] やカルシウムイオン [Ca+])と結合して石けんカスとなり、界面活性剤として働かなくなるから、硬度の高い水で石けん使用すると、泡立ちが悪く洗浄力も落ちるというわけらしい。
つまり、水道水の Mg+ や Ca+ の量を知ることが、洗濯コスト削減の第一歩であることがわかった。
水道水の硬度を知る方法
水にマグネシウムやカルシウムがどれくらい含まれているか、というのを表す指標は「硬度」というらしい。いわゆる軟水、硬水といわれているやつである。どうやって使っている水道水の硬度を調べるか、というと、手っ取り早いのは、水道局に電話してしまうことである。地域によって、また浄水場によって、そして季節によっても硬度は変わるらしいので、あくまでも目安であるが、知らないよりは知っていた方がいい。
さっそく水道局へ電話。硬度は浄水場へ聞いてくれ、といわれ、電話番号を教えてもらう。そして浄水場へ電話、住んでいる地区を聞かれ地区名をいうとしばらく待たされてから「おおよそ 30mg です」という返答をもらった。硬度の単位は mg/L なので、リットルを略して答えてくれたんだと思う。
WHO (世界保健機構)飲料水水質ガイドラインによる硬度の分類によると以下のように分類される。
軟水 : 0 〜 60mg/L 未満
中程度の硬水: 60 以上〜 120mg/L 未満
硬水 : 120 以上〜 180mg/L 未満
非常な硬水 : 180mg/L 以上
硬度が 30mg/L ってことは水道水のまんまでもう充分軟水。ということは石けんの使用量は標準よりも少なくてすむはず。
硬水を軟水化する方法
一応、硬水だった場合にそなえて、軟水化する方法を調べて下記のページを見つけたんだけれど、取り越し苦労でした。
→ uki ☆ uki せっけんライフ:炭酸塩で硬水を軟化する
上記ページでは、風呂桶に水をはり(風呂の残り湯でも OK )、炭酸塩(炭酸ナトリウム)を 0.03% 〜 0.05% ( 100L の水に大さじすり切り 3 杯)入れて、 2 時間置くことにより、炭酸ナトリウムがカルシウムやマグネシウムイオンと反応して、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムとして沈殿するので、その上澄みを洗濯に使用するという方法が書かれています。
上記サイト内のグラフを見てもらえばわかると思いますが、硬度が下がってもだいたい 30mg/L くらいなんです。だから、うちの水道水は軟水化なんてしなくて充分。パッケージに書いてある標準の使用量より減らしても充分洗濯できる、ということがわかりました。
ちなみに洗濯時に石けんと一緒に炭酸ナトリウムを投入しても、石けんの脂肪酸とマグネシウムやカルシウムが結合する力が強いので、石けんカスが先にできてしまうようです。
軟水の場合の洗濯石けんの使用量はどれくらにすればいいの?
これももう実験されている方がいました。しかもわたしが使っているシャボン玉スノールで。
→ uki ☆ uki せっけんライフ:硬度の高い水での洗濯
上記ページの真ん中より少し下の表によると、シャボン玉スノールでは、硬度 20mg/L で標準使用量の 0.78 倍、硬度 40mg/L で 0.92 倍。ここから予想するところでは、硬度 30mg/L では、標準使用量のおおよそ 8 割ですむことがわかる。つまり、同じだけシャボン玉スノールがあったとして、水道水の硬度が 30 mg/L のうちでは、だいたい 2.5 割増で使えることになる。ふふふ、だいぶ節約になるぜ。
石けんに炭酸塩を加えて石けんの使用量を減らす試み
うちの水道水の硬度が 30ml/L でかなり軟水なので、石けんの使用量が少なくてすむことがわかりました。もう少し、節約できないか考えてみます。石けんは、水溶液の ph がアルカリ傾けばそれだけ洗浄力が上がるようです。下記サイトの牛脂の溶解実験の ph の値を見てみてください。
→ uki ☆ uki せっけんライフ:石けんは合成洗剤より良く落ちる
じゃあ、硬度 30mg/L のとき炭酸塩(炭酸ナトリウム)入りの石けんはどれくらいの使用量になるのか、ってことでまた下記のページを参照。(ここで使用する炭酸ナトリウムは水軟化剤ではなくアルカリ剤としてです。)
→ uki ☆ uki せっけんライフ:硬度の高い水での洗濯
35% の炭酸塩入りの粉石けんを使った場合の硬度と使用量の関係は、硬度 20mg/L のとき 0.71 倍、硬度 30 mg/L のとき、 0.86 倍。(軟水では炭酸塩入りの方が使う量が少なくてすむようです。硬度が高い場合は逆に使用量が多くなるから注意。)
35% の炭酸塩入りの粉石けんの標準使用量を 1 とするとき、標準的に使用した場合の石けん(脂肪酸ナトリウム)の割合は 0.65 。硬度、 30mg/L のときの使用量を標準の 0.8 倍とすると、 5% の炭酸塩入りの粉石けんに含まれる脂肪酸ナトリウムは、標準使用の場合と比べて、 0.52 (0.65 × 0.8 = 0.52) となる。理論上はさらは約半分シャボン玉スノールの使用量を減らせる計算になります。
シャボン玉スノールと炭酸塩( 35% )を混ぜたときのコストの計算
楽天では炭酸塩 ( 炭酸ナトリウム) 3kg が 980 円で売られていますから、 1kg あたり 327 円。シャボン玉スノールは 10kg 6300 円なので、 1kg あたり 630 円。価格的には炭酸塩はシャボン玉スノールの約 1/2 。なので炭酸塩を 35% 入れたとしてコストとしてはおおよそ下記のような式が成り立つ。
● 35% 炭酸塩入りシャボン玉スノールを 1kg つくった場合の価格
630 円 × 0.65 + 327 円 × 0.35 = 約 524 円
シャボン玉スノールを単体で使った場合に比べて 1kg あたり 106 円安くなる計算になります。
シャボン玉スノールの標準使用量は「水 30L に対して 35g 」です。うちの水道水の硬度は 30mg/L なので、約 8 割の使用量を考えると、「水 30L に対して 28g 」という計算になります。 1 回の洗濯を水 30L 使うと仮定すると、 1kg で約 35.7 回洗濯ができます。つまり 1 回の安くなる金額は下記の計算になります。
・シャボン玉スノール(水 30L で洗濯したときの洗濯 1 回あたりのコスト)
630 円 ÷ 35.7 = 17.6 円
・シャボン玉スノールに 35% の炭酸ナトリウムを混ぜたとき(水 30L で洗濯したときの洗濯 1 回あたりのコスト)
524 円 ÷ 35.7 = 14.7 円
水 30L で洗濯したときの洗濯 1 回あたりのコストの差
17.6 円 – 14.7 円 = 2.9 円
1 回あたり約 2.9 円の差、あまりにもみみっちい。調べていたら、シャボン玉石けんの公式から会員価格で購入すると、シャボン玉スノールが 10kg で 5,670 円( 4000 円以上で送料無料)らしい。これだと炭酸塩を混同しても安くなる金額はさらに小さくなる。そこまで手間をかけて、しかも、アルカリが強い炭酸ナトリウムを混ぜる必要があるのか。答えは Non である。
結論
うちの水道水は硬度 30mg/L の軟水なので、純石けんでも十分洗浄力がある。よってシャボン玉スノール 10kg をなるべく安価に購入し、標準使用量の約 8 割で使用する。汚れがひどいときだけ炭酸塩を加えることを検討する( 20% 〜 40% くらい)。汚れのひどいものはあらかじめ洗濯石けんで下洗いをしておく。
また、シャボン玉スノールにはアルカリ剤が入っていないため、毛なども洗える。おしゃれ着なんかも洗濯できるのです。普段着なら洗濯ネットにきちんとたたんで洗えば、洗濯機の普通コースでもそれほど傷みません。よって、分けて洗うよりも洗濯回数が減る。これにより、水道代と電気代の節約ができる。また、アルカリ剤が入った洗剤で洗うより繊維が傷まず衣類が長持ちするので、長い目でみれば被服費の節約にも繋がるはず。
ということで、いろいろと小難しいことを書いてきましたが、使用量を約 8 割に減らしてシャボン玉スノールを使う、という結論に落ち着きました。今回、高校で習った有機化学の片鱗が少しだけ蘇りました。ああ、もっと真剣に有機化学を勉強しておくんだったなぁ。